オオカミ社長は恋で乱れる
「あの、今まで本当にありがとうございました。もうどこも痛くないし大丈夫ですので・・」

と言ったところで西条さんが言葉を被せてきた。

「そうか。それなら明日の夜、食事にでも行かないか?」

「え?」

急な話題転換に思考が追いつけなくなる。

食事って言った?何で?

意味が分からなくなった私に、西条さんは「どうだ?」と確認してくる。

「食事・・ですか?」

「そうだ。明日の夜は予定が空けられたので、一緒に食事でもと思ってな」

「え・・いや・・でも」

思わぬ誘いに明らかに動揺してしまい、言葉が途切れ途切れになって返事どころではなくなる。

どうして食事って話になるのだろう?

私の戸惑いなど気にならないのか、どんどん話を進めていく。

「夜7時過ぎなら自宅にもどっているか?その頃迎えに行く」

「あっ、いえ・・でも・・」

「明日は予定が入っていたか?」

「・・・いえ。・・あっ、でも子供達がいるので」

上手く断るつもりだったけど、西条さんにはあっさりと返されてしまった。

「みんな一緒でいいじゃないか」

「えっ、子供達もですか?」

「ああ、是非」

「ご迷惑じゃないですか?」

「そんなことない。なかなか楽しい子達だ」

「あ・・ありがとうございます」

楽しい子達だと言ってもらえて素直に嬉しくなった。

そんな私に西条さんはもう一度「明日みんなで何か美味しい物を食べよう」と言ってくれた言葉で私の心が動いた。

「はい、よろしくお願いします」

お礼を言いながら自分の口元がほころんでいる事に気付くと同時に、電話越しに西条さんが柔らかく笑った息遣いが聞こえた。

するとその直後、西条さんが甘い声でささやいてきた。

「よかった。君ともゆっくり話がしたかったんだ。明日、楽しみにしてる」

「・・・あ・・はい」

「じゃあ、明日また連絡する」

耳に残る西条さんの言葉にボーッとしながら、しばらくその場立ち尽くす。

そして胸に広がる不思議なザワつき・・・。

「何だろう・・・これ」

処理できないその気持ちに戸惑っていると、起きてきた悠と凛が私の手を握ってきて「ママー、お腹すいたー」と悠が催促してきた。

ハッとして思考も現実に戻り、バタバタと朝の支度に取り掛かった。
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