オオカミ社長は恋で乱れる
「俺は君が思っているような人間じゃない。人に優しくしてきたこともないし、子供好きなどころかはっきり言えば苦手だった」

「え?・・でも・・・」

私が意外に思い否定の言葉を口にすると、西条さんは気まずい表情を見せてきた。

いつも堂々とした佇まいで精悍さを感じていたし、優しい顔も見てきたし。

でもこんな顔は初めてだ。

そう思って見ていると、西条さんは小さなため息をついて自嘲気味に言った。

「君に見せてきた姿を俺の周りの人間に見せれば驚きの顔を間違いなく見せるだろう。現に佐賀はあまりの変わりように呆れているくらいだからな」

「そうなんですか?」

「ああ。そもそも今まで人に興味を持ったことがなかった」

「えっ?でも西条さんは本当に優しく親切にしてくれてきたと思います。私や子供達に申し訳ないくらいにいろいろとして下さって。本当に西条さんは優しい人って心から思ってます」

優しくない・子供好きじゃない・人に興味を持ったことがないなんて意外なことを聞いて、あまりに自分が見てきた西条さんと繋がらなくて『そんなことない』って否定した。

すると低い声がその場の空気を変えた。

「それだけか?」

「・・・・え?」

戸惑い聞き返すと、今まで見たことのない顔をした西条さんがささやいた。

「君にとって俺はただの優しい男か?」

「・・・・・」

それは何故か甘い声で、鋭さの中に憂いを含んだ眼差しで私に問う。

その瞳に見つめられて、私は小さく口を開いたまま静止した。







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