オオカミ社長は恋で乱れる
そして翌日、朝の会議を終えて社長室へと戻る上司の後ろ姿を眺めながら、佐賀は苦笑していた。

今日の西条は出社時から機嫌の良さが滲み出ていた。

別にニコニコと笑顔を浮かべていたわけではないが、見ていれば分かる。

昨日清水さんと食事へ行き、何かしらの進展があったのだろうと思いながらその段取りを思い出し独り苦笑した。

そう、その食事へ行くという準備も慌ただしいものだった。

一昨日の朝の会議で会議室に向かう途中、ふと西条が「明日の夜の予定は?」と聞いてきた。

「はい、20時に会長と奥様との会食が予定されて・・・」

「キャンセルしてくれ」

まだ自分が言い切る前にかぶせて言ってきた言葉に、「ですが・・・」とついためらいの言葉を出してしまう。

仕事に邁進する社長。もちろん日々忙しい。

スケジュールをうまく調整しながら、なるべく負担がかからないように秘書として態勢を整えている。

それでも休日のスケジュールを割いて、入れなくてはいけない仕事も出てくる。

そんな息子の大変さを会長も奥様も十分理解している。

なかなか実家に顔を出さない一人息子。

2か月に1度程、会長と奥様との会食が予定される。

いつも忙しい我が息子に会えない妻を思いやっての会長の気配りだと佐賀は理解していた。

時にどうしても大切な商談が入りキャンセルになる時があるが、今回はその予定はない。

だから西条に聞き返す意味で躊躇いがちに発言したのだが、すぐにきっぱりと言い返されてしまった。
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