極上社長と結婚恋愛
 

「俺はずっと前から福原さんを見てたのに」
「ずっと……?」

工藤さんの勢いに気圧され、私はまた一歩後ずさる。
けれど狭い店内で、すぐに作業台に背中がぶつかってそれ以上逃げられなくなってしまう。

「いつも向かいのお店から、福原さんのことを見てたのに。朝一で仕入れた花の準備をしているときも、営業中も、お店を閉めて事務仕事をしているときも、ずっと俺は見ていたのに」

そう言って工藤さんは通りに面した大きな窓をあごで指す。

道路を挟んだ深夜まで営業している喫茶店があるけど、いつもそこから工藤さんに店の中を見られていた……?
知らないうちにいつも誰かに見られていたという恐怖に体がすくむ。作業台についた手が小さく震えた。

「それなのに中が見えないように窓にロールカーテンをつけたり、俺のことを頼ってくれなくなったり。あの男が来てから福原さんが遠くなった」

言いながら工藤さんが足を一歩進める。近づく距離に息をのむ。


 
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