極上社長と結婚恋愛
私が幼いころに父が病に倒れてから、看病と子育てと仕事の三つの役目をその細腕ですべて引き受けこなしてくれた。
闘病の甲斐なく父が亡くなってからも、女手ひとつで私を育ててきてくれた。
息つく暇もない生活がつらくなかったわけがないのに、母はいつも気丈に笑っていてくれた。
優しくて強い、自慢の母だ。
その母が今、幸せそうに笑っていた。華奢なうなじが見える長さで切りそろえられた丸みのあるボブヘアーを揺らしながら話をする母。その姿を愛おしそうにみつめるお義父さん。
お互いに、大切に思いあっているのが伝わってきて、すごくお似合いだと思う。
「名前ででも、お義父さんとでも、好きに呼んでくれていいからね」
まず初めにそう言われ、私は少し照れながら頷く。
「じゃあ、お義父さんで……」
幼いころに父を亡くした私には、その言葉は少しくすぐったい。
勇気を出して口にすると、お義父さんは柔らかく微笑んでくれた。
「大きな息子しかいないから、かわいい娘ができて嬉しいよ」
笑みを含んだなめらかなバリトンでそう言われ、私も嬉しいですと微笑み返す。