極上社長と結婚恋愛
 

とはいえ、いつまでもここで立ち尽くしているわけにもいかない。私は鉢を抱えなおし、エントランスの奥にある総合案内へと向かう。

「フラワーショップ ガーデニアです。都倉様宛てに、鉢植えのお届けに上がりました」

鉢を抱えてそう言った私に、受付に座るふたりの女性が顔を見合わせた。

「都倉、ですか?」

少し戸惑ったように聞き返され、頷きながらはっとする。
電話を受けた時に届け先の会社名と名前しか確認しなかったけど、こんなに大きな会社ならきちんと部署名も聞くべきだった。

たくさんの社員が働く中で、名字だけでその人を探し出すのも大変だろうし、もしかしたら同じ名前の人もいるかもしれない。

自分のうかつさを後悔しているうちに、受付担当の女性は受話器を持ち上げどこかに電話をする。短く数度やりとりしたあと、優雅な仕草で奥のエレベーターを指した。

「あちらから十階にお進みください」
「あ、ありがとうございます」

よかった。名前だけでどこの部署かわかったんだ。ほっとしながら会釈をしてエレベーターへと進む。

 
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