極上社長と結婚恋愛
一番下にある一階のボタンから順番に視線を上に向け、行先のボタンを押す。目的の十階は一番上にあった。
ボタンを押すと音もなく登っていく最新式のエレベーター。すぐに目的の階に到着しドアが左右に開くと、目の前に広がった空間に私は思わず息をのんだ。
オフィスなんだから、デスクやパソコンが並びたくさんの社員さんが働いている活気のある場所を想像していたのに、そこは高級ホテルのロビーのような落ち着いた空間だった。
広いエレベーターホールのダークブラウンの壁を、天井に埋め込まれた暖色系のダウンライトが上品に照らしている。
これは一般社員が働くオフィスではなく、重役たちが仕事をする役員フロアなんじゃ……。
戸惑いながら一歩踏み出した足が、毛足の長い絨毯にわずかに沈む。思わず驚いて足元を見下ろす私に、靴音が近づいてきた。
「鉢植えの配達ですね。お待ちしていました」
慌てて顔を上げると、シンプルなスーツを身に着けた長身の美女がいた。
意志の強そうなはっきりとした顔立ちに、綺麗に施されたメイク。
セミロングのワンレングスの黒髪を片方だけ耳にかけ、露になった耳たぶには上品なダイヤのピアスが光っていた。