極上社長と結婚恋愛
「どうかした?」
私の顔を見て首を傾げた直哉さんに、「ストッキングが履けなくて……」と正直に言うと、さらに首をひねる。
「ストッキング? 肌が弱いとか?」
「違うんです。伝線させるのが怖くて」
「伝線?」
不思議そうな顔の直哉さんの前に、おずおずと手を差し出す。
いつも水に触れているせいで乾燥した手のひら。
指先には植物の灰汁がしみこみくすんで見えるし、トゲや葉の処理をするせいで傷だらけだ。
こんな手荒れのひどいガサガサした手でストッキングに触れたら、あっという間に伝線させてしまう。
「家で履くときはささくれがストッキングにひっかからないように、薄い手袋をつけて履くようにしているんですけど……」
私のボロボロの手を見下ろした直哉さんが「そうか」と少し驚いたように頷いた。
「ごめん、今まであずさちゃんの手がそんなに荒れて大変だったなんて、気づかなかった」
「いえ、花屋なんだから仕方ないんです。もう慣れてますし」