cafe レイン
『バカなの! あっちから連絡来ているかもしれないじゃん。何があったかわかんないけど、今すぐ解除しなって』

「私、もう諦めようって思ってるんだよ」

『……いや、なんとなくそうだろうなって思っていたよ。楓の様子から。話したくなかったらいいけど、何があったか話せる?』

「…………」

私はそれに口籠る。吐き出したらまた傷付きそうだ。それでも、律ちゃんにはちゃんと話したい。少しの沈黙の後、私は意を決して話し出した。
花さんのこと。レインの名前の由来。あの日、会いたかったと言われてタクシーに乗り込んだ後のこと。キスされたことだけは言えなかったけれど。
律ちゃんはずっと相槌を打って聞いてくれた。

『そっか。楓、大変だったね』

「うん」

全てを聞き終えた後、律ちゃんがそう言ってくれて救われた。

『ねえ。月曜日、オーナーさんのところ行こうよ』

「え」

律ちゃんの発言に私は目をぱちくりとさせる。

『テレビ出ていたし、忙しくてきっとこっちに構ってる暇なんてないだろうし。それにそろそろ食べたくなってるんじゃない?』

「そうだけど」

『あ、嘘。本当は私があのクレープ食べたいの。だから付き合って』

「律ちゃん……」

律ちゃんの舌をぺろっと出している姿が容易に想像ついた。

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