cafe レイン
「今日飲みに行かない?」
「あれ、今日彼氏と会うんじゃなかったっけ」
「なくなったんだよね。仕事残業しなきゃならないみたい」
「本当に。じゃあ、行こっか」
「楓の話も聞きたかったし」
そうだ。律ちゃんに話そうと思っていたからちょうどいい。
飲みながらだったら本音もすんなりと話せそうだ。
律ちゃんがカバンを持って、立ち上がると私に確認する。
「よし、駅前の居酒屋でいい?」
「うん、いいよ」
そうして、二人で向かおうとしたら、
「二人で飲みですか? 俺も混ぜてくださいよ」
そんな声が沖くんからかかった。
返事をしたのは律ちゃんだ。
「えーいいけど、沖さ。それすぐ片付くの?」
眉間に皺を寄せながら、律ちゃんが彼のデスク周りを指差した。
沖くんのデスクは書類が散乱している。これがすぐに片付くとは思わない。
「あっ、ご、五分ください。五分!」
手をパーにしてこちらに突き出すと、彼は散らばった書類を片付け始める。
「長い、三分」
「き、鬼畜」
律ちゃんがそう返すと、沖くんは泣きそうな声をあげた。
それに私は笑った。