ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
いつも通りわたしの策に乗ってくると思っていた。

「アホか、お前」

なのに、彗大は乗ってこなかった。

バカみたい。仮にもわたしが好きなんでしょう?
その好きな女からの誘いを蹴るなんて。バカみたい。

抱き締めるわけでもなく、ただ、頭を引き寄せてくるだけの抱擁ともいえない行為。

痩我慢してるのは見え見えなのに。バカみたい。

「……バカはお前だろ」


なのに、何故だかこの時、涙が滲んで、溢れて、止まらなくなった。


バカみたい。思惑通りにいかなくて、なんでこんなに嬉しいの。



でも、このことがわたしを余計に焦らせた。

この優しい気持ちは邪魔なんだ。

割り切らなければ。先がない。

バカみたい。描けなくて焦ってるのに。

描けないことに気付かれたら。

自身の引力がなくなってからじゃ、もう遅いんだから。


「ここ。行きたい」

迷いを断ち切る為に困り果てる彗大をホテルに引き込み、彗大が呆れている隙に冷蔵庫の中のありったけのアルコールを摂取した。

ここからは正直、記憶の方は途切れ途切れだ。

最初から全力で誘っていたことは記憶しているけど、なんだか前半は思ったような反応は貰えず、ひたすら怒らせてばかりいたように思う。

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