ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
わたしへの好意が、画を差し引かれた後何パーセント残るかはさておき、社優李の画にどっぷり120パーセントハマってしまった人の行き着く先を知っている。


「社優李の絵は人類の宝だ。やっぱり君と結婚したい」

例えば昔、その要素の一点でプロポーズしてきたひとがいた。

それはわたしの通っていた高校の、一回り以上年の離れた美術教師だった。

(名誉の為に言っておくと、その人は別にロリコンではなかった。)

当時わたしはまだ17歳で、大した経験もしてなければ、はっきり言って好みでもなかったので。

そんな愛のない結婚は嫌です。と、定型一文でお断りした。


「まだまだ子供の癖に、画で誑し込むなんて、末恐ろしいこと」

その要素で分かりやすく妬まれたりもした。

これは美術教師にフラれたと後に噂になった数学教師のセリフで、だからよく考えたら直接的に画とは関係ないんだけれど。


こんなことを今思い出しているのは、当然、彗大に言われたアレがひどくわたしを混乱させ続けているから、で。


“引力の強い画を描く社優李はどんなクソ女であっても人を惹きつける”

ああ。また、あなたの出番かもしれません。

あの美術教師のプロポーズ現場に、実は偶然居合わせていた人物がいた。

その人はわたしより4つ歳上の音楽の教育実習生で。

数学教師に嫌味を吐き捨てられた後の誰も居ないと思っていた放課後の廊下で、その人はひょこっと顔を出してくるなり、
あーやっぱりまたお前か!と、わたしには自覚できない呼び止め方をして、自覚できる内容を笑顔で言った。


「人類の宝とか誑し込むとか、スッゴイねぇー。アンタどんな絵描くの?ちょっと見たいわー」

それが現在、音楽講師をしている彼、櫻田佐波との出会いで、今では数少ない友人のひとり、の筈だ。

(というか、どっちの現場も偶然通りかかるって、そっちもかなりの確率でスッゴイと思う。)
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