ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
スマホを手に取り、登録履歴数の少ない一覧をつ、とタップして、コールする。

ーー♪♪♪、

すぐにコールが途切れ、佐波さんの柔らかい溜息が聞こえる。
これは毎度変わらずの開口一番がでる合図だ。

「連絡来なさすぎて番号消すとこだった」


佐波さんが就職して以降、わたしと佐波さんが連絡のやりとりをするペースは、わたしからの手描きの年賀状を含めて年に一、二度あるかないか。

つまり、年賀状を抜けば年間ほぼゼロ。

向こうはわたしの誕生日に「手描きの年賀状分だ」と、何かしらの物品を届けてはくれるものの、連絡する理由がないとかで、連絡は一切して来ない。

なので、意思の疎通が図れる連絡といえば大抵が、わたしの困った時という薄情な始末。

これで胸を張って友人というのは、いささか無理があるかとも思うので、佐波さんからの一声を待つ。

「で、なに。友人Y。今度はハンバーグの作り方以外も必要になった?」

こうしていつも通り、佐波さんは相談の機会を与えてくれるのだ。



「ーーふーん。じゃあお前、しょうこさんが引っ張ってきた“彗大の声”でしか今、描けなくなってんの?」


佐波さんとしょうこちゃんはお互いには面識がないけど、わたしがお互いの話をお互いにするので、もう知った仲のように話は通る。

「うん、そんな感じ」

「で、急に彗大からプロポーズされたことが、意味不明で混乱してると」

「うん、しょうこちゃんが昔言ってた条件うんぬんにはぴったりなんだけど……」

結婚は契約よ!

どの話題からそうなったかはもう忘れたけど、昔、しょうこちゃんが断言していたことだ。

最終押さえておくのは、相手と自分の条件がどれだけマッチングするかだと。

移ろう気持ちの部分だけを重視すると、気持ちがなくなった後で痛い目に遭うとも言っていた。


「なるほどね。優李の気持ちがそいつに入っちゃったことも問題なわけか」

「えっ」

「美術教師の時みたく、即答で断らないのがそーゆーことだろ」

「ああ!なるほど」

「お前、分かりやすいからね」

流石は佐波さん。4つしか変わらないのに本当に頼りになる。

自慢じゃないけど、今までわたしを分かりやすいと断言し続ける人間は、佐波さんをおいて他には居ない。


「うん、多分、好きなんだと、思う……って、わーー恥ずかしい!」

「ウザいから惚気禁止」

「のろけってわけじゃ、」

「つーかそれ、んー。微妙なとこだよね」

「え」

珍しく佐波さんの歯切れがあまり良くない。本当に珍しい。
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