ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
「まぁ、アドバイスするなら、お前、ちょっとそいつと離れて頭冷やせ」

「え、でも離れたら画が描けないよ」

「それ、マインドコントロールじゃないの」

「マインドコントロール?」

「どーせ過度な音フェチに初めて気持ちまで入ったから勘違いしてお前、変なスイッチ入っただけだ」

「変って……。描けなくなるスイッチってこと?」

「お前単純だしアホだし。ここまで熱あげたのも初めてだからそーなってるだけ。頭が落ち着きゃそのうち描ける」

「んーでも、」

「俺の時も言いくるめられて簡単に股開いたろ」

「なんで今その話すんの!」

今言われると唯一の痛い思い出を。

出会ってしばらくした頃、佐波さんの奏でるピアノの音に発情して、一時期、画を描かせてもらっていたことがあった。

で、不意に佐波さんに、発情して描くんならセックスしたらもっと良いのが描けんじゃないの?と提案され、当時のわたしもそれは名案、と簡単に処女をあげてしまったのだ。

「お前ほんとアホだよな。画に見境ないのもここまでくると天才か?」

「アホアホ言うなこの詐欺師!別に画だって、そんな良くもならなかったし!」

「花の17歳が画ばっかりも不健全だろ?おかげでソッチの良さに目覚められたわけだし感謝しろよ」

「現役JKの処女貰っといてその言い草!」

「俺、イケメンだしうまいしちゃんと仕込んでもやったし。むしろ初めてでそんだけセットついたらお得過ぎるだろ」

「自分でそれ言っちゃうとか怖ーい!
そーやっていつも女を手玉にとってんのね」

「ま、俺に言わせりゃ彗大も多分、その類の男だぞ」


ああ、話が急に本題に!

でも、類でいえば、佐波さんと彗大は確かに人種というか系統?が似ている。


「とにかく。冷静な判断ができねー内は、好きでも描きたくても、そんな直情型の男に近寄るな」

「直情型?」

「周りが見えてないってこと」

「?」

「お互い見えてないなら余計ダメだろ。そいつはお前にとって薬になるより、毒になるリスクのが高い」

「毒……?」

「あーめんどくせーな。画を優先するなら、毒が何なのかわかんねーうちに離れるべきだと俺は思う」


佐波さんの言うことはいつも的確だ。

ちょっと詐欺られたりする時もあるけど、本質の部分で信用できる友人。


「毒を自覚したらお前、画、本気で描けなくなるかもしれないぞ」


だから、これがただの脅しだとは思ってない。けど……

「ああ、あとも一個だけアドバイスしとく」

「え、なに?」

「もしその直情男に今後、俺の話題出しちまうようなことがあったら、俺は女ってことにしろよ」

「なんで?」

「なんででも。多分その時になったら分かる」

「ふーん?」


佐波さんは、ほんとに何でも的確すぎる。

あなたはいつも、わたしの一周以上先を予測してアドバイスしてくれるのに。

結局わたしは、いつも佐波さんが回避すべきだと言うどの問題にも片っ端から突進してしまっていたかもしれない。

手を焼かせる友人Yで、本当にごめんなさい。
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