ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
んー、と二回唸って、少し黙る。
わたしにも伝わるように整理して組み立ててくれているのか言葉を選んでくれているのか。

この数年、わたしが躓いて連絡すると、的確にキツイ引導をくれる彼は、それでも救いの言葉も必ずくれた。

“引力の強い画を描く社優李はどんなクソ女であっても人を惹きつける”

今でも印象強く残る、佐波さんのストレートで世間の現実を突きつける“わたし自身はどうでもいい”というメッセージ。

自分の画が評価され名前ばかりが先走りだした頃、周りの反応が過剰に好意的に変化したことに、これでもかなり戸惑って、その時に言われた言葉なんだけど。

それにはまだ続きがあって。

“お前、一応天才だし宿命だと思って受け入れろ。
でもま、画抜きのアホで非常識なお前と友達やってるヤツも少なからずここにいる”


言葉の半分以上けなされてたけど、それでもくすぐったくて、ニヤニヤがしばらく止まらなかった。

「おい優李、聞いてんのか」

ああ、うっかりトリップしていた。

最近、よく過去を振り返っては懐かしい記憶を掘り返してるから、つい。


「うん」

「だから。しょうこさんの声にどハマリした時も優李、最初の方は取り憑かれたみたいにずっと、“しょうこちゃんに捧げるシリーズ”ばっか描いてたじゃん」

「うん、描いてたね」

「しょうこさんの時は他の声でチャレンジしたのがダメだっただけで、普段通りのスタンスの画は描けてたワケだろ」

「うん、描けてたね」

「でも、彗大と出会ったことでどうやっても身動きがとれなくなったならそれは完全な閉鎖空間だ」

「閉鎖空間……」

「わかんねーけど可能性として、もし彗大が自分の声で生み出されるワンパターンの画に飽きたら、優李、お前捨てられるんじゃね?」

「捨て……」

「プロポーズもどうせ一時の勢いだろーし、まぁ勢いが冷めたら……俺だったら絶対後悔するね」

「絶対……」

「少なくとも自分の力で無限に生み出していた頃のお前とは違うんだろ?」

「う、」

「しかも相手は腐るほど女を知ってる男なんだろ?」

「多分、いや間違いなく」

「なら、お前程度じゃ女として繋ぎ止めれねーだろうし、画もそれじゃ、後残ってんのってただただ手間かかるだけの面倒くせー女……」

「わかった!それ以上はやめてー!」

一番ナイーブな所を的確に滅多刺し!
やっぱり歯に絹着せない人だこの人はー!



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