ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
あー最悪だ。あのポンコツめ!
今日は1カ月ぶりに優李とゆっくり出来る貴重な日だった。
本当なら、特別な日になる予定だったんだ。

それなのに、あのヘボめ。とんだ巻き添えだ……!


「優李……なんか、食べたいモンとかある、か?」

「………別に。」

優李が冷た過ぎる……!!

あれは数時間前、最終確認のチェックに会場に着いた時の出来事に遡る。



「わっ……!すごー…!」

急な変更とか時間の不足とか。そういうマイナス要因をクオリティに微塵でもだすのはプロの仕事じゃない。

今回の相手は、本物を知りつくした魔王と色の天才だ。

メイン会場の出来については勿論、メインまでに続く押さえきれるだけ押さえきったブースが俺らデザイン事務所のアピールポイントだ。

デザインのレイアウトだけではなく、優李の作品を最大限以上に引き立たせる照明の種類や位置取り、全体のバランス、メインに続くまでの世界観、細心の注意と細心の演出を心掛けた。

「へぇー♪やるじゃない!神山くん」

予想していた反応とはいえ、魔王様から褒められると、改めて成功を実感する。

実は魔王様に認められた暁きには、考えていたプランがあった。


それは、あのうやむやにされたままで終わった残念なプロポーズの仕切り直し。


『出会いは最悪。けど、運命の相手でした。』

なんて、安っぽくてゴロゴロ転がってるシナリオ、俺なら絶対ないわー。

そう思っていた俺が、心底捕まえたいと思った相手がまさにそれという、もはや喜劇。

画の天才というアピールポイントが無ければ、声フェチ通り越した変態だし、アホだし、あざといし、家庭的な女子力ほぼないし、割とゲスいし、家族構成とか全く知らねーし、知ってる中でも一生付きまとうであろう人物は姑魔王と小姑詐欺師だし。

まぁ、これでプロポーズのリトライしたいってんだから、常軌を逸してるといえば逸してる。
正気の沙汰でないといえばないという、自覚はある。


< 135 / 144 >

この作品をシェア

pagetop