ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
「、はへーは……っ!!」

「っ、痛ぇ!」

突如、いつものテンションで叫ばれたついでに指をカリッと噛まれて、はっと我に返る。

思わず引き抜いて唇の上に置いた指の感触がまた酷く柔らかくて、思考がまた逆戻りしかけるが、そうもいかない。

さっきまでのエロい空気を台無しにする“はへーは”は、おそらく“まけぃた”なんだろう。

このタイミングでのそれは、中断の意思だ。

それを示された以上、残っているのはこの女への言い訳及び謝罪なんだろーが。

だめだ。自慢じゃないが、こういう局面で女に拒否られたことが一度もない俺には、この女への言い訳が全く思いつかない。

謝罪に関しても、こんな中途半端な状況で逆に何を謝れば良いのか正直わからない始末だ。

(そもそも首に二度もかぶりつかれた分を考えたら、まだお釣りが返ってくるくらいじゃねーの?)


「まけぃた」


スケッチブックを持っていた手がきゅっと俺の手首を掴み、あっさり自分の顔から余韻ごと全てを引き離す。


あーくそ。
名残惜しさを感じているのは俺だけかと思うと、男という生き物が少し恨めしくなる。

「なんだよ」

悪いが、言い訳も謝罪も何も浮かばない以上、開き直りのような最低対応だとしても、この女の出方に従うしかーー


「っね!今の口の音、ナニコレー!頭に直接ひびくの!こんなの初めて!!エロい!エロい!!
これ、なにかな?!やっぱ油絵の具?!まけぃた!ちょっと今すぐ買ってきてーー!!」


「…………。」


つーか残念過ぎるだろ、このど変態女め!
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