ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
「神山くんさぁー、昨日優李にナニ教えてくれたのかなぁ」


画廊に来て第一声、宮下オーナーの笑顔の仁王立ちとその特徴ある通る声に、そのままUターンしたい気分になる。

まだ門前払いの方が良かったかもしれない。


「……何のことでしょう?」


間違いなくこのオーナーには効かない手と分かっていながらも、最善策もみつからないので最上級の営業スマイルで応戦する。

でも、考えてもみろよ。

未成年ならまだしも、お互い成人してから6年以上経つ大人だぞ。

だいたいあの後、あの変態女が騒ぎ過ぎて悪目立ちしたもんだからソッコーでカラオケを退店。

その後も描きたい描きたいうるさいから、優しい俺はそのまま画材一式が揃うアトリエにぶち込ん……じゃなかった。送り届けてやったんだ。

いくらオーナーでもその辺まで口出す権利はないだろうし、第一文句があるなら最初から首に縄つけて飼い殺してりゃ良い話だろ。


「ああ、勘違いしないでよ」

俺の最上級営業スマイルを敵対と受け取ったのか(いやまぁ的確な受信アンテナだが)、オーナーは仁王立ちの姿勢を解いてこちらに歩み寄ってくる。


が、

「ナニ教えてくれようがナニやらかしてくれようが、別にそこはいいの。当人同士の話だしフリースタイルで結構」


意味深な笑顔を残したまま寄ってくる、というのは嫌な予感を増長させる。

「ただ。」

コツンと響くヒール音が俺のパーソナルスペースに入った瞬間、オーナーの両手ゴム手袋装着に、俺は全てを理解した。


「当人同士のナニを、こっちにまで強要されるとーー非っ常に迷惑なのよね?」

「申し訳ございませんでした。」


あいつ、昨日の今日で早速オーナーにも“同じおねだり”しやがったな!

あの、ど変態女がーーー!
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