ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
なんなんだ、なんなんだコイツは!

イマイチ踏み込んでこない絶妙ななぞり方と、物足りないのにポイントはちゃんと突いてくるソフトキスの嵐。

そうかと思えば、欲しいポイントの少し外した箇所をしっとり舐め上げてみたりしてくる。

なんなんだ!なんなんだよ!この、微妙に我慢出来てしまう生殺しみたいな焦れる感じは!

と、そこまで思い至って、今回の焦れるテーマに“沿わされている”ことにハッとする。


「っ、」

「?あれ、」

「……は、」

「何か……萎えちゃった?」

「は……?」

「物足りなすぎる?ちょっと音の色が変わった」

「お前……」

それってもうエスパーの領域じゃねぇか。

気付きたくなかったことが、こいつの悪意なき言葉によってはっきり晒される。

すげー探るポイントが上手いのも、俺の気持ちをくすぐるタイミングで名前を呼んでくるのも。

単純にコイツには、色が見えていたから“した”だけだ。

俺に触れる時、彗大と呼ぶ時の、コイツの気持ちだとか別にそーゆーのを期待していたわけじゃなかった。

けど、全てを見透かされて、淡々とビジネスで“されている”感覚が途端に虚しくなって、集中を欠いていく。


「彗大?」

「ちょっと……悪い」

ダメだ。今コイツとこれ以上触れ合ったらダメだ。

謝ったのを合図にもうやめるつもりでカラダを退かそうとする。

しかし次の瞬間。

ドン!

予期せぬ事態が起こった。

コイツの手が急に俺を押し倒し、その勢いで馬乗りしてきたのだ。


「彗大、あーん」
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