ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
辻褄が全て合ってすっきりするどころか、こうなるようオーナーに仕向けられていたような流れがゾッとする。恐ろし過ぎる。

タダでは転ばないどころか、闇金の取り立てのようなやり口、やはりあの人は魔王だ。

俺の仕事とは切り離された別の画の作業の筈が、聞いたが最後、意味のわからない独占欲が俺を支配する。

くそ!くそ!転がされているのは分かってるのに!

コイツの、特にそういう画は、俺以外関わらせたくない。

「……協力すればいいんだろ」

「ウソーン♡協力してくれるのー?」

何がウソーン♡だ!
分かってやってる癖に白々しい。

小馬鹿にされたような軽いノリにイラっとし、冷たくあしらおうとする俺に、間髪入れずコイツはギュッと俺の手を包む。


「彗大、本当に本当にありがとーね!」

「……はいはい」


………っくそ!計算されつくした後の素直なありがとうとか、あざと過ぎるんだよこのアバズレ女!

(そして俺!本性分かってんのにイチイチ喜ぶなよ……。)




「で?焦れるエロだっけか。また指でも使うか?」

自覚する前と後じゃ、もう無茶は出来ない。
割り切ろうとしていた前回のベロチューも、実は途中から本気でヤバくて、あと数秒遅かったらきっと最後まで“致して”しまっていたかもしれない。

平常心を保つのに今もいっぱいいっぱい
で、正直抑える自信のない今回は、指でもヤバイくらいなんだ。サラッと指提案してるが、割と真剣に切実だ。なんとか指で勘弁してほしい。


「んーじゃ、ちょっと色々試してみよっか」

「は?」

「えい!」

「!?」

何が一体起きたのか。突然コイツの人差し指と中指が俺の口に入ってくる。

「?!、?!」

「んー?彗大みたいに上手く出来ないなぁ」

ゆっくりクチュクチュかき混ぜてみるも何か納得が行かないらしく、直ぐに抜き取られたかと思うと、今度は唇を寄せてくる。て、

「ちょっと待て!」

「?」

「なんで俺がされてんの?!」

「え?言ったじゃん。焦れるエロの声が聞きたいって。」

「は?!」

「彗大の、焦れる音、魅せて?」


そう言うと、両耳の裏に手を差し入れ俺の顔包み、耳を指で絡めるように刺激しながらゆっくり丁寧な口付けが落ちてくる。

「彗大」

浅い口付けの合間に呼ばれ、ちゅ、ちゅ、と音を立てて、唇から徐々に首筋にかけてキスの雨が降る。

その間にコイツの手は、耳からゆるゆると俺の上半身に降りて、絶妙な力加減でなぞってくる。

つーか何だコレ?!開始10秒で何つーテクニック披露してくれてんだ!

「ちょ、待て……」

「あ、今の声、めっちゃ萌える」

「ちょ、」

「もっともっと♡」

か、完全に遊ばれてる……!
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