ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
そう推論に結論づけて1秒にも満たない間に。

「、わっ」

わたしのカラダは反転し、唇は予定外のモノで激しく塞がれる。

「う、んんっ、まっ、」

気付けば腕は固定されていて身動きも取れない。
これはちょっと挑発し過ぎた?流石にマズイかも?

慌ててまけぃた、と口を開けば、より深く侵入を許してしまう。


え、なに?ちょっと今なにされてるのわたし?
拒むべきと伝達する神経を考える暇もなく遮断され、代わりに、次々と大量の麻薬みたいな音が口から耳に注ぎ込まれる。


「ん、っ……、、、」


キタ。また、あの指の時の感覚だ。
や、違う。あれ以上の感覚。

眼で魅るというよりは、全身で色を直に触るような。

カラダ中の細胞が反応する。

彼の舌が、どんどん私を掻き乱して。

彼の欲情を引き出すつもりが、わたしの欲情が引きずり出される。


わ、すごい、すごい、すごい……!
欲に委ねた瞬間、視界いっぱいに画素数が跳ね上がったような鮮やかな世界が広がる。

この眼で、この触れる色を、描かなきゃ。

何か近くにある、なんでもいい。かくもの、絵の具、はやく!

「、……っは、」

ほとんどの細胞が彼に夢中のなか、器用にも手だけはバタバタと騒ぎ出す。

そんなチグハグなわたしが可笑しかったのか、一瞬彼の唇と手の力が抜けて。

描ける!と手を伸ばそうとした瞬間、手も唇も何もかもを塞ぐようなとてもとても深い口付けが襲った。


「ふ、んん……!」


強引なのに、とても丁寧なーー。

まるで稲妻のような荒々しさと、新月のような静寂さでわたしを縛る。

美し過ぎて動けなくて。

彼の苦しげな眼までもが、ひどく艶っぽくて眼が逸らせない。

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