ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
言ってすぐにハッとする。
しまった。色々とすっ飛ばし過ぎた。

けれど、ここはコイツの反応がみたいとも思う。

少なからずさっきの冷たさは嫉妬からくるものだ。……と思う。

そういえば女あるあるの一説に、女同士の競り合いに男の市場価格が一時急上昇するも、手に入れると“こんなものか”と価格が暴落し、取り合った男への気持ちが大してなかったという恐ろしい話もよく聞く。

最近、チラチラと手応えを感じる瞬間があるにはあるが……。

自分の中でやっぱり聞くべきでないかもと迷い始めたところで、コイツが第一声を呟いた。


「あ」

YESでもNOでもなく、“あ”。

「失敗、しちゃったぁ」

「失敗……?」

「アルマーニ、無駄死にです」

「はぁー?!」


まさかのアルマーニ死亡のお知らせ。

結局この日は、絵の具に塗れたアルマーニで応接室を出た俺に、ニヤついた会社の奴らが途端に生温かい気遣いの目に変わり、

まぁ分かりやすく言えば、これと言って冷やかされる羽目には遭わなかった。

(まぁ俺が奴らでも、2人で応接室に篭ったきり、出たらこの格好とか何に触れるべきか分からんわ。)

因みに例の女は、村野が対応する前に怒って帰ったそうだ。

(とりあえず村野には、余罪がないかの確認だけはしておかなければ。)


そんなこんなで俺の一連の失態からのプロポーズは、割となかったような扱いであっさり幕を閉じたのだった。

< 89 / 144 >

この作品をシェア

pagetop