ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
「アルマーニ2着分の慰謝料寄越せ!」

ハイスペックがビックリの小さい発言を繰り広げたのは、今から数時間前の話。

あのプロポーズの日からかれこれ9日間、忙しいだの外出中だの、のらりくらりとすれ違い続け、流石に確信した。

完全に避けられている。

俺が居なきゃ描けないんじゃなかったっけ?
あのホテルでの色仕掛けの数々はどこいったんだ?

オーナーに聞いたところ、しばらくあいつも新しい依頼を受けずにいるらしく、こっちのクリスマス企画も後は搬入などの当日の作業ばかりで、ビジネスとして会う理由はこれっぽっちもないと言えばない。


でも、俺がお前に会いたいんだよ!

というわけで。キモイことを承知でアトリエで待たせてもらうこと約3時間。

遂に姿を現したこいつに向けて、用意したのが冒頭のセンスのない一言。


「10万くらい……?」

「金じゃねーよ!」

マジで財布を出そうとするから手を掴んで止める。

「お前、料理とかできる派か」

「一時期凝ったくらいでオールマイティではない派……」

どんな派だよそれ。
でもまぁ、口実には丁度いい。

「じゃあ、お前の得意料理で俺をもてなせ」

「え。」

「外出ばっかで手作りに飢えてんだ」

ああ、緊張する。9日ぶりが効いてるのか、前の数倍可愛く見える。

「実家に帰ったら?」

少しは俺の口実を酌めよ!
ダメだ、またのらりくらりとかわされ逃げられる。

これはもう、強制連行だ。

「さっさとスーパーいくぞ」
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