歪な光
怖くない。
好きになった人に本当の自分を伝えたい。





「私ね、瞬ちゃんが初めて私を家に住まわせてくれたあの日…」






瞬はあの日、私に『僕と生きよう』と、
手を差し伸べてくれた日のことを思い出している表情をしていた。






あの日のこと、瞬は何も聞いてきたことはなこった。






まあ、『ひき殺してくれてよかったのに』なんていう私に、しつこく何があったかなんて聞けるわけないよね。






だから、ちゃんと話さなきゃ。






「あの日ね、母親の彼氏が先に家にいたの。そしたら、リビングで押し倒されて…」






今でも、あいつの力が手首に蘇ってくるようで、悪寒が走る。






そんな私をみて、瞬は私の手をそっと繋いだ。同じ男の人でも、瞬の手だけは特別だった。






その体温が、あいつの感触を忘れさせてくれる。




むしろ、この手で、いろんな感触を上書きしてほしい。









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