脳内☆彼氏
いじめには、今の所あわずにすんでる。一番怖れてたのは、皆がせっちゃんの真似して私を犬の名前で呼ぶ事だったけど、誰もそんな事覚えていなかったらしい。

私はいじめの標的ではなく、空気になることが出来た。

ホッとするのと同じ位、恥ずかしかった。

私、自意識過剰だった?ていうか、被害妄想?

こんなんだったらストレスためてまで、せっちゃん達と一緒にいる必要全くなかった。三人共、嫌な思いして。結局私が二人に迷惑かけただけだった。

いじめの標的を探しているクラスの猛獣から身を守るために、草食動物みたいに群れたら安全かも…って思ってたんだけど…

バカじゃん、私。


女子達のカン高い笑い声が飛び交う昼休みの教室。まるでジャングル。

その中で私は本の盾に隠れて息をひそめる。人をいじめたくてしかたない子たちに目を付けられないように。


捨華は私を覆い隠すように、広い袂で私を包み込んだ。

(大丈夫、私が花音を守ります。)

(どうやって?だってあんた妄想じゃん。)

(守れます、花音の心を。傷付いたまま、むき出しで教室の中に置き去りにされた心を、私だけが包んであげられる。)

捨華に後ろから抱きすくめられて、安心して泣き出しそうになった。

あたたかい。

なんてリアルな妄想。サラサラした絹の肌触りも、捨華の息遣いさえも、私の首筋の皮膚が感じとっている。

私、そろそろやばい?
まともじゃなくなってきてる?

(花音は、私が必要でしょう?)
(……。)

私は応える事も、捨華の手を振り払う事も出来なかった。
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