鬼部長に溺愛されてます

私の率直な質問に桐島部長は驚いたように目を見開いた。


「俺が優しい? そんなわけがないだろう。俺はみんなが噂しているとおりの人間だ」


鼻を鳴らして否定する。

ううん、絶対にそんなことはない。私の好きな食べ物を覚えていてくれたし、それにあのときも……。


「この前は、棘を抜いてくれたじゃないですか」


冷たい人間だったら、私が痛がっていようがかまわなかったはずだ。


「あれくらいで優しいなんて言ってたら、水原を騙すことくらいわけないな」


部長が私をからかうようにして誤魔化す。

その優しさが嘘なら、この気持ちも楽になれるのに。やっぱり冷たい人間だったと思えれば、部長への想いも消せるのに。
でも、真の部長の姿はそうじゃない。


「新入社員研修のときも……」

「……のときも?」

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