鬼部長に溺愛されてます
仕事から離れているからだとわかっている。
その笑みに特別な意味がないことも知っている。
でも、私に少しずつ笑顔を向けてくれる部長に、ますます募る想いは止められない。
離れる時間が訪れた寂しさをなんとか抑え、「私の方こそ、ごちそうさまでした」と頭を下げたそのとき――。
強い力で腕を取られ、そのまま彼の胸に引き寄せられた。
自分の身になにが起きたのか、当然ながらわかるはずもない。
これまでで一番大きく弾んだ脈拍が高速に転じていく。もちろん抵抗する意思なんて、私にはあるはずもない。
「あ、あの、部長……?」
「――シッ!」
部長は自分の口元に人差し指を立て、私をそのまま入口にある植え込みの陰へと引き入れた。
さらに密着する身体に、私は部長の腕の中で小さく身構える。
憧れの桐島部長と抱き合っている現実に、鼓動は激しくなるばかり。冷たい空気を取り込んだ胸が息苦しい。
どうしたらいいの……!
胸に手を当てて呼吸を整えるけれど、これから起こる可能性のある出来事に嫌でも期待が膨れ上がっていく。