鬼部長に溺愛されてます
そして、部長も私も気持ちはひとつなのかもしれないと感じた次の瞬間、「アイツもここに住んでいたのか……」と、部長がボソっと呟いた。
部長の視線をたどっていくと、コンビニの袋を提げた男の人が、ちょうどマンションへと入っていくところだった。
あれは人事部の中谷さんだ。確か桐島部長よりひとつ後輩のマネジャー。
偶然にも、彼も私と同じマンションに住んでいたらしい。
そこで桐島部長のとった行動の理由に気がついた。中谷さんに見つからないように機転を利かせて私を引き寄せたのだ。
……そうだよね。
桐島部長が私を恋愛の対象として見るわけがない。
わかっていたくせに自分に都合のいい展開を想像してしまい恥ずかしさが込み上げる。
それと同時にがっかりする気持ちも大きくて、テンションの上がり下がりに自分で疲れてしまった。
そのとき期せずして中谷マネジャーの視線がこちらへ投げかけられる。
目が合うのを恐れて、私は慌てて顔を背けた。
その視線を避けるように、部長が私をいっそう抱きしめる。
きっと恋人同士を装って、彼の目を誤魔化そうとしているのだろう。
こんなところでふたりきりでいるのを目撃されたら大変なことになるから。