鬼部長に溺愛されてます
社内恋愛禁止を言い切っている桐島部長が、その部下に私といるところを見られたりしたら、一大事もいいところだ。
そんな状況は十分に理解しているものの、胸の高鳴りは抑えられない。桐島部長の腕の中なんて、願っても叶わないことなのだから。
だから、どうかもう少しだけこのまま……。
私の願いも空しく、しばらくして中谷マネジャーの姿が消えたのを確認すると部長はあっけなく私を引き離した。
「……ごめん、水原」
彼が焦ったように私から数歩下がる。
そんなに慌てて離れなくてもいいのに。
どこか拒絶されたようにも感じて、胸にチクンと痛みが走る。
私が落ち込んだことにも気づかず、部長は右手を軽く上げた。
「それじゃ、おやすみ」
「……おやすみなさい」
そうして彼が一歩を踏みだしたときだった。
突然、足元から崩れるように彼がその場にうずくまる。
「――部長!?」