鬼部長に溺愛されてます

そう思うと、どうしたらいいのか急にわからなくなった。
一緒にいられる嬉しさの形勢が逆転し、不安が押し寄せる。
なにもできずに、私はただ茫然と部長を見つめることしかできない。

しばらくすると彼の寝息が聞こえてきたので、音を立てないように慎重に近づいた。
素顔をここまで凝視したのは初めてだ。

そのハッとするほどの美しさに、思わず目を見張った。
閉じられた切れ長の目元、薄く開いた唇、襟元から覗く鎖骨。
そのどれもが私の気持ちを高ぶらせていく。

桐島さんが体調を崩しているときにそんなところを意識するなんて不謹慎だ。
自制しようとすればするほど、心が言うことをきかなくなる。
こんなに近くにいるのに触れられそうで届かない。

せめてこのまま、もう少しだけ眠っていてくれたら……。
そう願わずにはいられないのは、目が覚めればまた遠い存在の人になってしまうからだった。

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