【完】姐さん!!
「はあ……!?」
なんで……!? なんで衣沙が!?
というか、例えそうだったとしても、衣沙はわたしのことを"姐さん"とは呼んでいないし。
「なんのために……!?」
「さあ……?
でもなんとなく浸透してますよね、それで」
あの男、さては嫌がらせで付けたな。
わたしが女豹という呼び方を嫌がっているのを知っているくせに、余計なあだ名を増やしたな。
「……次会ったら文句言ってやる」
チッ、と隠すこともなく舌打ち。
それを見ていた奥の何人かが怯えた顔をしたような気がするけど、気のせいだ気のせい。
「そういえば、姐さんと衣沙さんって。
毎朝一緒に学校行ってるんですか?」
「ん、まあね……
家近いし、昔からずっと習慣なのよ」
「へえ……」
さっさとパスタを食べ終え、チョコレートをひとつ口に入れる。
さおにも一つ手渡して、頬杖をついた。
「なんだかんだ……ずっと一緒だから」
家族ぐるみで仲が良い。
お互いにお互いのことをいちばん知ってる自覚がある。わたしは衣沙のことを、衣沙はわたしのことを。
だから、だった。
だから。──誰よりも彼のことを知っているから。わたしは、彼の代わりにこの場所にいる。