【完】姐さん!!







──午前8時。

がちゃりと玄関の扉が開く音がして、流していたテレビからリビングの扉へと視線を移す。



「おはよ〜」



そこから顔を覗かせたのは衣沙で、彼に各々「おはよう」を返した。

お父さんは既に仕事に行ってしまっているからいないけれど、衣沙がウチに来るのも入り浸っているのもよくあること。



「姉ちゃんも、衣沙兄も学校休みとかいーな」



特に驚くこともなくそう言ったのは、わたしの弟のなるせで。

昨日から中学3年生になった彼も、本来入学式の今日は学校が休みだ。



だけどなるせは生徒会長をつとめているから、今日も登校する。

わたしと衣沙が通う高校も今日は入学式で、生徒会役員以外は休み。



私服で我が家に訪れた彼は、お母さんから渡されたコーヒーを受け取ってソファに腰掛けた。

お母さんは専業主婦で、今日も家にいる。




「でもお昼には帰ってくるんでしょう?」



「うん。

姉ちゃんと衣沙兄は休みだしどっか行くの?」



問われて、衣沙を見る。ゆったりと優雅にコーヒーを口に運ぶその姿は見る目麗しいし、女の子たちからすればこんな姿を見ることができるわたしは"羨ましい"らしいけど。

……そもそもわたし、衣沙が来るなんて聞いてないわよ。



「アポなしで押しかけたんだよ〜」



「実際のところは?」



「遊ぶ予定だった子にドタキャンされた」



……うん、そんなことだろうと思った。



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