【完】姐さん!!
◇
──午前8時。
がちゃりと玄関の扉が開く音がして、流していたテレビからリビングの扉へと視線を移す。
「おはよ〜」
そこから顔を覗かせたのは衣沙で、彼に各々「おはよう」を返した。
お父さんは既に仕事に行ってしまっているからいないけれど、衣沙がウチに来るのも入り浸っているのもよくあること。
「姉ちゃんも、衣沙兄も学校休みとかいーな」
特に驚くこともなくそう言ったのは、わたしの弟のなるせで。
昨日から中学3年生になった彼も、本来入学式の今日は学校が休みだ。
だけどなるせは生徒会長をつとめているから、今日も登校する。
わたしと衣沙が通う高校も今日は入学式で、生徒会役員以外は休み。
私服で我が家に訪れた彼は、お母さんから渡されたコーヒーを受け取ってソファに腰掛けた。
お母さんは専業主婦で、今日も家にいる。
「でもお昼には帰ってくるんでしょう?」
「うん。
姉ちゃんと衣沙兄は休みだしどっか行くの?」
問われて、衣沙を見る。ゆったりと優雅にコーヒーを口に運ぶその姿は見る目麗しいし、女の子たちからすればこんな姿を見ることができるわたしは"羨ましい"らしいけど。
……そもそもわたし、衣沙が来るなんて聞いてないわよ。
「アポなしで押しかけたんだよ〜」
「実際のところは?」
「遊ぶ予定だった子にドタキャンされた」
……うん、そんなことだろうと思った。