【完】姐さん!!
仮にも彼氏のはずなんだけどな、俺。
とは、言わないでおく。なるみの機嫌を安易に損ねると面倒なのは知ってることだし、泣かせたこともあって、流石にそんな気分じゃない。
「……構ってほしかった?」
「べつに結構です」
「俺が構わないから拗ねてた?」
構わないどころかここに来ないのが通常運転。
そんないい加減なトップがいても霧夏が潰れたりしないのは、なるみやほかのメンツがいてくれてるから。
信頼してんだよ、これでも。
ベッドの端に腰掛けて、なるみに手を伸ばす。
やわらかい黒髪を撫でていたら、なるみは警戒心を解くみたいに瞳をゆるめた。……まだまだ甘いな。
もしここで俺に押し倒されでもしたらどうするんだ。
ベッドの上なんて危機的状況だと思うけど。
「……だって。
せっかく一緒に来たのに、つまんない」
「……うん」
「みんな衣沙が最近協力的だって喜んでくれてるのに、衣沙にそんな素振りないんだもの。
……ここはわたしじゃなくて衣沙の居場所なのに」
いじけるようにシーツを見つめるなるみ。
ごめんと謝って、未だに鳴ってるスマホはぶつっと電源オフ。
「せめて楽しそうな顔してよ……」
「ごめんって。
ほら、こっちおいで。なるみ」