【完】姐さん!!
◆
翌日。
なるみと登校すれば、案の定すぐに女の子たちに囲まれた。原因は誰よりも俺が一番わかってる。
「ねえ衣沙! やめるってどういうこと!?」
「あたしたち本命は許容して遊んであげてたのに、突然やめるなんてナシでしょ。
粟田さんだって良いって言ってくれてたのに」
「……だから説明した通りだよ。
もう俺、遊ぶのやめようと思って」
教室に押しかけてくるのは、何も同学年の子だけじゃない。
先輩やら後輩やら、俺がどれだけ遊んでいたのかは言うまでもない。さすがに全員相手にしてられなくてどうしようかと思っていれば。
「……衣沙はただ、優しいだけよ」
うしろから腕をまわされて、一瞬驚く。
それがなるみだったから余計に驚いて、振り返って彼女の顔色を伺っていれば。
「わたしが、別れるって言ったの」
「え、」
「衣沙と一緒にいるの疲れたから、これ以上遊ぶならもう別れるって言ったの。
……そしたら、やめてくれるって」
机に腰を下ろしてる俺のうしろから肩に顎を乗せているなるみは、綺麗に微笑む。
そのくちびるから紡がれるのは明らかに嘘、なんだけど。
「粟田さんが言ったなら、仕方ない、よねー……」
「それなら衣沙くん先にそう言ってよー。
なるみちゃん優先なら仕方ないじゃんー」
なぜかあっさり納得して、「仕方ない」と言いつつ帰っていく女の子たち。
……さっきまでの文句が嘘みたいだ。