【完】姐さん!!



「わたしが嫌がってるの知ってるくせに……」



「でもいまさらじゃねえ?

もう1年ぐらい経つし、気づいてるもんだと思ってたわ」



開き直らないでほしい。

……だけどそれについては、確かにわたしも文句は言えない。



彼の言う通り、わたしが姐さんって呼ばれるようになってからもうかなり経つ。

どうして今まで気づかなかったのか、本当に不思議で仕方ない。



「いいじゃねえの。

おかげで、変な男が寄ってきたりしないだろ〜」



ぽすっと、寝転んでわたしのベッドを占拠する衣沙。



……勝手に寝転ばないでよ。

せっかく今朝シーツ取り替えたところなのに。




「……それって、呼び方じゃなくて。

衣沙がわたしのこと彼女だって言ってるからだと思うけど」



当然付き合っているわけではない。

だけど衣沙はこれまで何年も女の子と遊んできて、一度も揉め事を起こしたことはない。



それは、大前提に「本命はなるみ」という嘘をついているからで。

彼女がいる上で遊んでいることにしておけば、それに同意してくれる女の子しか集まってこないらしい。



……修羅場になりそうなのに上手くいくんだから謎だ。

おかげでわたしはいろんな子から「はやく別れたほうが良いんじゃないの?」と心配される羽目になっているし。



「どっちでもいいよ〜。

中学の時はストーカーとかされてたじゃねえの。それに比べればマシだろ?」



「……そうだけど」



言われるたびに、「まあ浮気してても結局衣沙はわたしのこと好きだから……」なんて、苦しい言い訳をしているわたしの身にもなって欲しい。

というか、彼氏に浮気されている彼女、というポジションがすでにキツい。



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