【完】姐さん!!
「どうしたの? 衣沙」
なるみはさっき自分にはもったいないって言ってくれたけど。
なるみこそ、俺にはもったいない彼女だと思う。
今はともかく、ちゃんと付き合う前の俺の行動は、あまりにも彼女に優しくない。
……知らないところで、色々傷つけたんだろうな。
「大好きだよ」
伝えれば、おどろいたみたいに目を瞬かせて。
それからふわりと笑って、「わたしも」って言ってくれる。……どうしようもなく、しあわせ。
「テントのとこ、もどろっか。
そろそろ兄貴たち帰ってくる頃だと思うし」
何度傷つけたのか、俺にはわからないけど。
傷つけた分だけ、大事にしたいって思ってるから。
「……衣沙」
隣に並んで、なるみが繋いだ手をゆるめて、指を絡める。恋人つなぎ。
……いつもは控えめななるみは、たまにこうやって、大胆になろうとしてくれる。
その健気な姿が、すごく愛おしくて。
絡んだ指先にすこし力を込めたら、なるみはうれしそうに笑ってくれた。
「だいすきだよ、なるみ」
「うん、あのね。それさっきも聞いた」
「……なるみの口からも、
ちゃんと『だいすき』って聞きたいんだけど」
恥ずかしそうに視線をそらして。「やだ」って言葉で誤魔化そうとするくせに。
結局聞こえないように好きって言ってくれるなるみが可愛すぎて。……元からあった"離さない"って気持ちが、余計に強くなったのを感じた。