【完】姐さん!!
「よかったね、ホテル近いところ取ってて」
「そうだね。
でもこれならホテルの客室から見えたと思うけど?」
「なるみちゃんがね、
屋台でりんご飴とか買いたいって」
「ああ……姉ちゃん屋台好きだもんね」
年下のなるせに呆れたような顔で見られるわたし。
計画立てたときにはしゃいでたの、絶対バレてる。こういうところが意外と子どもっぽいって、衣沙にも言われるんだろうけど。
「人多いだろうから、はぐれないようにね。
衣沙くんなるせくん、ちゃんと彼女守ってあげてね?」
可愛らしい笑顔でそう告げる満月ちゃん。
衣沙は「もちろん」って言ってるし、なるせはなるせで「わかってるよ」って返事してるし。
……モテるのがよくわかる気がする。
それでなくても見た目かっこいいからね。
「思った以上にすごい人だな……
手とか繋いでた方がいいと思うよ。最終的にホテルにもどってくれたら大丈夫だけど、はぐれたら心配だからね」
……まずい。
衣那くんのその言葉に普通を振る舞ってうなずくけど、今になってお腹が痛くなってきた。
薬は念のためバッグに入れてあるけど、こんな人混みで突然止まれないし。
じわじわと痛みが増してる気がする。
あとで水だけ買って薬を飲むタイミングがあればいいけど。
とにかく人混み抜けたら、何とかなりそう……?
「……兄貴。ちょっといい?」
広く開けた場所に到着すると、衣沙がそう言って衣那くんを呼び止める。
邪魔にならない位置に移動してから、「どうしたの?」と衣那くんは振り返った。