【完】姐さん!!



「俺なるみとふたりでいたいから、

花火のあいだ別行動していい?」



わたしにとっては、何ともありがたい提案をしてくれる衣沙。

ふたりになったら薬飲むタイミングもあるだろうし。思わず、ほっと肩の力を抜くわたし。



「いいけど……うん、はぐれないようにね。

どうする? あとで合流する?」



「俺となるみだけ部屋同じだから、4人で相談してくれていいよ。

とりあえず、ホテル帰るときには1回連絡入れる」



「ん、わかった。またあとでね」



ひらひらと。

手を振って、4人と別行動を開始する。……今回は衣沙のお願いに救われたなあ、なんて、ちょっと呑気なことを思っていたら。



「ちょっと休憩しようかなるみ」




すこし歩いたところで、わたしをそう呼び止める衣沙。

「え?」と顔を上げたら、彼はわたしをじっと見つめる。そして。



「お腹痛いんじゃねえの?

さっきからちょっとかばって歩いてるだろ」



優しく聞いてくれるから、泣きそうになってしまった。

……気づいてくれてたの? もしかして、ふたりになりたいって言ってくれたのは、そのため?



「最初は慣れねえ下駄のせいかと思ったけど。

薬飲んでたのも見てねえし、お腹痛いんじゃないかと思って」



「よく見てるね……」



泣きそうなまま、衣沙を見上げる。

薄暗いのをいいことに身を寄せたら、優しく抱きしめて「大丈夫?」って聞いてくれた。



その背中に腕を回して、うなずく。

浴衣が崩れないように優しく腰をさすってくれるから、また泣きそうになった。……こうやって衣沙が優しくしてくれるのは、何も今回に限ったことじゃない。



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