【完】姐さん!!
「ずるい……」
こんな人前だっていうのに、無性に触れたくなってしまう。
キスしてほしいって思った自分に恥ずかしくなって、衣沙の服を小さく握った。
「……ずるいのはなるみの方だって。
なんでそんなかわいいの。ここ来るまでに男に声掛けられたりしてない?だいじょうぶだった?」
抱き寄せるみたいに、わたしの肩を自分の方へ引く衣沙。
密着するかたちになって、恥ずかしいのにうれしくなる自分が怖い。恋愛って盲目過ぎる。
「大丈夫だった。
でもやっぱり、今度から迎えに来てほしい……」
「ん。いつでも迎えに行くよ」
「待ち合わせ、楽しみだったんだけどね。
……衣沙に会うまで時間がかかるから、やっぱり迎えに来て欲しくなっちゃった」
衣沙が待ってくれてるってだけで楽しいけど。
すこしでも長く、一緒にいたい。
「……ほんとかわいい」
頬を両手で包み込まれる。
近づく距離にキュンとして、目を閉じたら額にだけ触れるくちびる。……おデコにキス?
「ごめん、いまはここで許して」
困ったような、衣沙の笑み。
はっとまわりを見れば、ちらちらわたしたちを見ている女の子たちの姿があって。
「っ、」
顔が真っ赤になるのがわかる。
っ、しっかりしてわたし……! さっきまではちゃんと人前って自覚あったのに……!