【完】姐さん!!
「ほんとに、最悪……」
雑誌の中のかわいい女の子たちは、キラキラの笑顔だけど。
わたしがこんな風に変わったって、衣沙は見向きもしてくれない。
わかってるから、変われなかった。
わたしだって、もっと、綺麗になりたいけど。
『別に、衣沙の彼女ってポジションにこだわらなくてもいいんじゃない?
衣沙にとってなるちゃんは、ちゃんと特別な女の子だよ』
「……そんなとくべつ、うれしくない」
うれしいけど、うれしくない。
わたしだけを好きになってくれなきゃ、意味がない。……ぜったい本人には、言えないけど。
慰めるって名目だけで「俺の」って言ってくれるなら。
抱きしめてくれるなら、それも、嫌じゃないけど。
『なるみ』
ドキッと、心臓が跳ねる。
衣那くんにそう呼ばれるのはなんだか変な感じだ。しかも、声がよく似てる。……似てる、から。
『好きだよ』
「っ……」
大袈裟なぐらい、顔が火照った。
遊ばれてる。電話の向こうから黙り込んだわたしに、くすくす笑う衣那くんの声が聞こえてくる。彼は意地悪だ。
「っ、ばか……!」
甘い甘い声が、脳を侵食して、鼓動がうるさい。
衣沙に囁かれたみたいで、恥ずかしくて、でもなんだか嬉しくて。言った相手が衣沙じゃないことが、苦しくて。……ああ、もう。