【完】姐さん!!



ぽつりと。

つぶやいた言葉に、「え?」と顔を上げるなるみ。



手をつないでいたせいでその距離がいつもよりも近くて、ドキッとしたけれど。

動揺を悟られたくなくて「兄貴の結婚」と冷静に答えた俺に対して、「ああ」とさらに冷静な返事がかえってくる。



「いまさらじゃない?

衣那くんが満月ちゃんと結婚することになるなんて、普通に考えればわかるでしょ」



「………」



泣けばいいのに、って、思ってた。

泣くぐらい動揺してくれれば、俺だって。……素直になれなくても、抱きしめて慰めてやることぐらい、できるのに。



「……そろそろ兄貴以外の男も見れば?」



イライラする。

完全に俺を視界に入れないなるみにも、触れたいくせに臆病になる自分にも。




「そう言われてもね……」



「俺が彼氏になってやろうか?」



ふっと笑って。

余裕げに告げたのに、嫌そうな顔をするなるみ。美人が台無しってぐらいに嫌そうな顔をするから、またも内心舌打ち。



……いいじゃん俺で。

そりゃあ多少は、色々女の子と遊んでるけどさ。



「遊ぶのやめてくれるなら、考えてもいいけど」



「、」



「でもどうせ無理でしょ? 衣沙には」



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