【完】姐さん!!
「だったら、なに? なるみ」
「……もういい」
ぷいっと。
顔を背けたなるみが、バッグを手に取る。そのまま席を立った彼女は、足を進めてすぐに振り返った。
「……衣沙帰んないの。
もう既に、どこ行っても飲食店は満席だと思うけど」
「……、行くよ」
喧嘩ってほどじゃない。こういう口喧嘩はよくするし、いつもなるみが許してくれるまでとことん俺がご機嫌取りをするだけ。
そして今回も、なるみはもう許してくれるらしい。
返事してバッグだけ持って彼女の隣に並べば、なんでもないように歩き始める。
……こうやって。ずっと、隣にいたのに。
「……マジでスカート折るのやめたの?」
「折るなって言ったの誰よ。
ウチの学校でこんなにスカート長く履いてる子、1年生でも見たことないんだけど」
「校則なんてあって無いようなもんだしな」
……俺はずっと好きだった、って。
そんな思い切ったこと、言えもしないけど。
「ってか、お昼どうするよ。
どこも混んでるだろうし……どうせ混んでんなら、今流行りのチーズタッカルビとか連れてってやろうか?」
「さすが。女の子と仲良しなだけあって相変わらず流行に詳しいのね。
でも残念、わたしこの間なるせと一緒に晩ご飯で行ったから。……衣沙とふたりなんだし、適当に高校生に優しい値段のファミレスとかでいいわよ」
気を遣ってなさそうな口調に、口角が上がる。
……気を遣ってなさそうというか、実際に気を遣ってないんだろうけど。