【完】姐さん!!
「でもファミレスって便利よね。
ランチも楽しめるけど、デザートもあるし」
「最近はファミレスだけじゃなくていろんな店で出してるけどな~。
なに、なるちゃんデザート食いてえの?」
「食べたいって言ったら?」
「仕方ねえな。デザート付きで奢ってやるよ」
ぽんぽんと頭を撫でて言えば、うれしそうに笑ってくれる。
「奢ってくれなくても自分で出すわよ」ってなるみは言うけど、そんな顔を見せられたら、昼メシを奢るくらい何の苦痛でもない。
むしろ底抜けに甘やかしてやりたくなる。
俺だけにそうやって笑いかけてくれるなら。
ふたりでいる間はその笑顔を独り占めできるなら。
「あれ、衣沙となるみじゃん。
ふたりともいま来たの? 遅くない?」
俺はそれをひとり満喫してやろう……的なことを思いながら向かったファミレスで。
呼び止められて視線を向ければ、ちらほらと見知った顔ぶれがある。
当たり前か。ここ学校に近いファミレスだし。
俺らと同じ制服もそこらにいるし。……どう考えてもまわりの視線が気になって、なるみの笑顔を独り占めするどころじゃないな。
「おひめさまの機嫌悪くてさ~。
やーっと機嫌なおしてくれたんだよ」
賑わいを見せるファミレスだが、どうやらふたり席は空いているらしい。
案内される席に向かう途中、ひらっと手を振ってそう言っておいた。なるみはこういうとき大抵口を開かないし、席についてからはため息まで零す始末だ。
「よくそんなに愛想よくしてられるわね」
すぐに運ばれてきたお冷のグラス。
軽く持ち上げたそれに視線を向けたまま、なるみはつぶやく。……決して、俺に対して嫌味を言っているわけではないらしい。