【完】姐さん!!
「霧夏のトップが女、ってやつじゃないですか?
あながち間違いじゃないですよね、姐さん」
「あ、うん。ほぼ事実だわそれ」
肩に乗せた手の上に、衣沙が顎を乗せる。
そのせいで、必然的に近くなる距離。桜の香りに混ざって鼻腔をくすぐる衣沙の甘い匂いに、脳がくらりと揺れたような気がした。
「失礼な。まだ俺がトップでしょうに」
「月2程度しかたまり場に顔出しませんけどね」
「顔出してもすぐ帰るけどね」
衣沙の文句に、即言い返すわたしとさお。
それが不満だったのか衣沙は顔をしかめるけれど、なんでもいいからとりあえず離れて欲しい。右側だけ体温がやけに上がってる気がする。
「まー、最近は平和だもんな。
女がトップだろうと、喧嘩売られねーだろ」
「売られるとしたら、はじめっからコイツらに任せてないだろうしな〜。
……そもそも。俺がなるみのこと危険な目に遭わせるわけねえだろ」
「え、」
ばっと、振り返る。
肩に衣沙が顎を乗せているのを忘れていたせいで、あまりの至近距離にドキッと心臓が跳ねた。……が、焦りすぎたのがまずかったらしい。
「ちょ、あぶね……っ」
身を勢い良く引いたことでバランスを崩しかけ、衣沙がぐっとわたしの腕を掴む。
抱きとめられて無事に転倒は回避したものの、パニックがおさまらなかった。
事故とはいえ、わたしの身体に回されているのは、意外としっかりした腕。
さっきはほんのすこし香った程度だった衣沙の甘い匂いに包み込まれて、酔いそうになる。