【完】姐さん!!
聞いた話だと、わたしをストーカーしていたのは、前にわたしに告白してきた3年生の先輩だった。
当時からすでに霧夏にいた衣沙よりも素行不良で有名な先輩で、煙草やお酒、あるいはドラッグの噂もちらほら聞くような先輩。
でもその先輩は、女の子たちに頼まれていた。
『粟田なるみをストーカーして、いずれ襲って』と。
主犯の子の家がお金持ちだったから、お金につられてそれを引き受けた先輩のことは最低だと思うけど、それでも恨めなかった。
『さすがにそれはだめだ』って思って、何度も踏みとどまってくれた。
……だからわたしは、ストーカーされて気持ち悪い思いはしたけど、それ以上の被害を受けなかった。
先輩が踏みとどまってくれたおかげで、大きな傷を抱えずに済んだ。
そして衣沙は、どうやらわたしがストーカーされていることに気づいていたらしい。
様子を窺っていて、先輩に直接話を聞いて、話を持ち掛けてきた女の子たちを特定した。
「お前らがなるみにやろうとしてたこと。
……今ここで、やってやろうか?」
その場に居合わせた子の証言によれば、衣沙は女の子に馬乗りになったあと、そう吐き捨てた。
嫌がらせと、ストーカーの件の、主犯の女の子。
その前に衣沙が女の子たちにさんざんいろんなことを言って泣かせた時点でまずいと思ったクラスの子が、どうやら先生を呼びに行っていたらしく。
結局、衣沙はその場で取り押さえられるかたちになった。
そのあと、女の子たちも、衣沙も、先輩までもが停学になった。
正式に言えば衣沙はなにも悪くないんだけど、あの場を誰かが止めない限り、衣沙が何をしていたかわからないって判断された結果だった。
「衣沙……
高校に入る時、いきなりわたしに付き合うフリしようって、言い出したじゃない……?」
あの後から、さすがに嫌がらせは止んだけど。
ストーカーも無事に解決したけど。
衣沙はきっと、自分のせいでわたしがそんな目に遭ったことを、未だに気にしてる。
……だから、あの言葉が出てきた。
「わたしがまた嫌がらせされないように、
付き合ってるフリをすることにしたの……?」
よく考えたら、わざわざわたしを本命と言ってまで遊ぶ理由はない。
だって満月ちゃんは、衣沙の学校での生活を、知らないんだから。