【短編】 桜の咲く、あの日に
ぜろ

 桜を見るたび 僕は思う。

 「ずっと散らなきゃいいのになぁ」

 だってその方が 綺麗でしょ?
 
 けれどそれは 叶わぬ願いで

 散ってく姿も 綺麗だよって

 キミが僕に 教えてくれた。   



 咲いては散り、咲いては散る。 

 毎年それの 繰り返し。

 何で桜は 毎年咲くの?

 キミは僕に 問うてみた。

 咲きたいからかな、なんて言って

 僕の問いに 笑うキミ。



 咲いては散り、咲いては散る。

 ただただそれの 繰り返し。

 その行いに 意味はある?

 僕はキミに 問うてみた。

 あるんじゃないかな、なんて言って、

 僕の問いに 笑うキミ。



 そして今年も 桜が咲く。 

 どうして桜は 綺麗なの?

 僕はキミに問うてみた。

 だけど答は 返ってこなくて

 笑い声さえ 聞こえなくて

 そうだった かつて昔の隣のキミは

 僕の隣に いないのだ。 



 桜を見るたび 僕は思う。

 「ずっと散らなきゃいいのになぁ」

 だって桜はキミと僕の 思い出だから。  



 桜を前に 僕は叫ぶ。

 遥か遠くの 会えないキミへ。

 さよなら、キミ。

 さよなら、ボク。

 さよなら…。  



 そして今年も 桜が散る。



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