素直にバイバイが言えるまで
「夕焼けだな。明日は晴れか?」

教官はどうやらなぐさめてくれているらしく、妙に大きな声の独り言が聞こえた。


小さな庭先に面したベランダ越しの夕焼けを見ている母の姿が目に浮かんだ。


「明日は晴れるね」

「お母さん、明日がわかるの?」

「明日?そんなのわかるはずないじゃない」


と、笑いながら言って、幼い私をぎゅうっと抱きしめたあと、帰ってくるかもわからない父親の分まで夕食を作り始めた。


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