メトロの中は、近過ぎです!
4課の外からドタドタと走る音が聞こえてくる。
扉が開くと戸田君が顔を出した。

「大野さん。ショールームの打ち合わせいいですか?デザイナーさんがみえました」
「分かった。今行く」

そして戸田君は私を見るとニヤっと笑う。

「すっごいイケメンですよ」
「見に行く」

能天気に立ち上がって、呆れ顔の大野さんと笑っている戸田君の後ろからついていった。

3課と兼用の入り口が見えるところで、大野さんがいきなり立ち止まるから、危うくぶつかりそうになる。

「危な…」

言いかけた言葉が途中で止まったのは、そこに立っていた人を視界に捉えたから。

芸能人のようなオーラを醸し出して、どう見てもここ人形町支社の古びたオフィスには不釣り合いな人がそこにいた。

「シンさん……」

堂々とした大人の雰囲気で、こちらをジッと見ていた。
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