メトロの中は、近過ぎです！
一瞬の間、誰も動かない微妙な空気が流れた後、シンさんが薄く微笑んで会釈した。
私も慌てて頭を下げた。

どうして彼がここに…

一気に逆流し始めた意識にパニック寸前。

シンさん、なんで言ってくれなかったんだろう。

隣にいる大野さんからの視線も感じる。

二人揃ってシンさんの前に姿を現してしまったことが落ち着かない。
悪いことをしていて見つかったようなそんな気持ちで俯くと

「では、こちらでお願いします」
明るい戸田君の声に救われた。

シンさんは私に優雅な微笑を与えたままミーティングルームに入っていく。何も言わないで……

「真帆さん。何見つめてるんですか？」

気がつくと、隣にいた沙也香ちゃん。

「そうだね。見つめちゃったよ」

あはは…

絶対引きつってる笑いに沙也香ちゃんが気付かないはずはないんだけど、どうすることもできない。

ミーティングルームに麻紀さんがコーヒーを運んでいく。

「ハラマキがさっそく出て行ったよ。ターゲット変更か？」

前の席の伊藤チーフが楽しそうに見ている。

「そうですね…」

もう自分が何を言ってるのかよく分からない。

ミーティングルームでは、戸田君が図面を広げて説明している。
それを薄い唇を触りながら聞いているシンさん。

その前には大野さん。

鼓動の速さが治まらない。
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