メトロの中は、近過ぎです!
背中にまわった彼の腕の力が強くなり、私も彼のTシャツをギュッと掴んだ。
見上げると、二重の瞳がまっすぐに私を見下ろしている。
揺れる瞳に私が写っている。
熱い視線。

その瞬間、唇が触れた。

すぐに離されたけど、唇がはっきりとその温もりを覚えている。

そして分かるのは、これが裏切り行為だということ…

薄く目を開けると、おでこ同士をくっつけ合っている彼の長いまつ毛が揺れている。

近い。
彼の手が頬に触れるから、その手に手を重ねると、彼が少し離れた。

ズキと胸が痛んだ。

このまま続けてはいけないということを分かっている。
だから彼は私から離れた。

このままここにいちゃいけない。早く部屋に戻らなくちゃ
この手を離さなければ

でも……

そんな想いが彼に届いたかのように、さっきより強く抱きしめられると、今度ははっきりと唇が合わさった。

その瞬間、彼以外の全ての事柄が色褪せていった。

許されないことは分かっている。
でも、この瞬間だけでも、彼を全身で感じていたい。

何度も触れるだけのキスをした後、頬を持たれて彼の舌が私の中に入ってくる。

全てを奪う様に、夢中になって、何度も角度を変えながら……


もう止められない。
熱い。


涙が出た。
ツーっと頬を流れていった。

熱い舌が私の口内のすべてに熱を残す。
もう何も考えられなかった。

彼の唇が離れるとき、私の口からは甘い吐息が漏れた。

絡まり合った視線は、熱くて、彼も辛そうで……

そのまま後ろにあったベッドに抱き合ったまま倒れ込んだ。

彼のキスは更に激しくなって、あごから首へと下がっていく。
私は彼の頭を抱きかかえていた。

Tシャツの裾から彼の手が入ってくる。
ブラに手がかかったとき、彼の動きが止まった。
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